MY SENSE #06
atelier ST,CAT CEO
林 聖子

2026.02.27
<br>MY SENSE #06<br>atelier ST,CAT CEO<br>林 聖子

手放した先に生まれる、新しいクリエイティブ――
ジュエリーブランド”atelier ST,CAT”CEO 林聖子さん

【自分らしさを大切にする】オーダーメイドの結婚指輪・婚約指輪を提供するジュエリーブランド”atelier ST, CAT”。その代表として、日々経営と子育てに奮闘している聖子さん。ファッションエディターやアクセサリーデザイナーとしてのキャリアを経て、自身のスタイルを選択しながら新たな未来を切り開いています。

同じく子育てと仕事を行き来するTHINGS THAT MATTERディレクター・武笠綾子が、聖子さんのこれまでの道のり、大切にしている感覚、そこでブランドと家族を支える考え方について語り合います。

Q. アクセサリー作りを始めたきっかけを教えてください。

大学卒業後はファッションエディターやPR、フリーライターとして活動していたのですが、その間に趣味として始めたアクセサリー制作が原点です。当時、今のようなハンドメイド市場はまだ成熟しておらず、セレクトショップや周囲の人々から「ぜひ置いてほしい」と声をかけてもらえる機会が増え、自然と仕事として広がっていきました。

Q. ハンドメイドアクセサリーから結婚指輪へと変わったきっかけは?

ちょうどそのころ、インスタグラムが黎明期のタイミングで、自分でも予想できないほど反響があった時期がありました。多くの人に支持される一方で、周囲からの評価と自己評価がマッチしておらず、どこか納得感を持てないまま進んでいるように感じていたんです。

そこで一度アクセサリー作りから離れ、彫金を一から学ぶ道を選び直しました。技術を身につけ直したことで、シルバージュエリー制作を始めるようになり、ブランドの基盤を見つめ直すことができたんです。

その後、さらに大きな決断を迫られたのがコロナ禍後の市場の変化でした。ジュエリー製造がより簡単に行えるようになり、OEMを使った安価で似通ったデザインがマーケットに急増しました。そんな状況を目の当たりにし、「この競争の中で戦い続ける必要はない」と感じるようになったんです。そこで、以前から取り組んでいた結婚指輪に注力することを決意しました。

Q. 生きていく中で、大切にしている感覚はありますか?

私が大事にしているのは「手放す」という感覚です。以前は何でも自分でやりたいという気持ちが強かったんです。ただ、実は最初から意識して手放したわけではなく、キャパオーバーになった結果、いたし方なく任せてみたのがきっかけでした。でも、やってみたら意外とうまくいったんです。周囲を信頼して流れに身を任せることで、自然に物事が進んでいくという感覚を掴みました。

ありがたいことに、今では多くのことをスタッフに任せられるようになりました。現在はスタッフが10人ほどいて、半分が製造、もう半分がバックオフィス業務に携わっています。基本的に店舗やお客様対応はスタッフに任せているので、私は主に自宅や出先でブランドの運営や会社の経営についての役割を担っています。
手放し任せることで生まれる「余白」が、次のアイデアや挑戦に繋がるのだと感じています。

Q. 仕事と育児をどのように両立していますか?

仕事と育児は、私の中で隔たっているものではなく、常に自然に行き来している感覚です。ライフワークバランスという言葉には正直あまり共感がなく、隙間時間を使いながら仕事と育児を組み合わせています。子供が遊び始めたら、その間にパソコン作業をする、といった具合に、無理なく流れの中でこなしています。

私の場合はそれがストレスにならず、むしろ好きでこなせるタイプです。ただ、これを誰にでもオススメできるかというと、そういうわけではないなとも思います。

家庭での私自身の立ち位置や存在意義についても、改めて意識するようになりました。夫とは役割を分担しながら、私は「優しさ」や「安心感」をもたらすことで家族を支えています。また、すべてを自分でやろうとは思わず、周囲に任せられる部分があることをありがたく思っています。

仕事においては、手放すことで多くを任せられるようになった一方で、子供に対してはそれがなかなかできていませんでした。そんな時、小学校受験の際に先生から「自立」について学び、多くの気付きを得ました。それをきっかけに、子育てでも意識して手放す選択をするようになりました。

子供を一個人として尊重し、自立を促すために「手放す」という選択をしていく中で、仕事と育児の両方において、新しい視点や可能性を見出すことができたと感じています。

Q. 手放すことで広がる「クリエイティブ」とは?

ものを作ることだけが「クリエイティブ」ではないと感じるようになりました。働く環境や組織を整えたり、会社の未来やブランドの在り方を考えたりすること――そうした少し概念的なことも、クリエイティブの一部だと思っています。

今では、スタッフたちが働きやすい環境を整えることや経営そのものが、自分にとっての大きなクリエイティブの場になっています。また、手放すことで生まれる「余白」により、チャンスを受け入れたり、アイデアを生み出す空間が出来る、そんな感覚があります。

手放すことで得られる余裕や視点が、新たな可能性を広けてくれるように感じています。


「手放す」という選択を積み重ねてきた聖子さん。最初はいたし方なく始めたその感覚が、周囲を信頼し、新しい余白を生む力に変わっていった。
手放し任せることで生まれる余白が、新しい発想や挑戦を受け入れるスペースをつくる。その積み重ねが、彼女にとっての「クリエイティブ」そのものなのだろう。仕事も、育児も、どちらかを選ぶのではなく、行き来しながら進む彼女の歩みは、自分らしいスタイルを選択し続ける力強さにあふれている。




プロフィール
atelier ST,CAT CEO 林 聖子 / Seiko Hayashi
@atelierstcat
@payacat

1986年生まれ。東京都出身、起業家、3児の母。ファッションエディターを経て、2017年よりジュエリーブランド「アトリエ エスティーキャット(atelier ST,CAT)」代表取締役。「自分らしく、自由な」ファッション性の高いオーダー結婚・婚約指輪を扱う。代々木上原にMILESTONEが内装を手掛けたアトリエショップを構える。東京都女性起業家プロジェクトApt Women8期生選出。趣味は読書とピラティス。

ご着用アイテム
ADJUSTABLE WAIST JACKET COLOR : NAVY ¥46,200 tax in
SAILOR BLOUSING STRIPE SHIRT COLOR : OFF WHITE ¥24,200 tax in
ROUND SILHOUETTE PANTS COLOR : NAVY ¥26,400 tax in