MY SENSE #05
ネイリスト
MANAMI
内面をたずね、内面に届ける繕いを――
ネイリストMANAMIのゆくさき
指先を飾ることを超えて、そっと感情に触れるように色を重ねていくMANAMIさん。その深部にある静かな力はどこから生まれるのか。
「MANAMIさんのネイルには、いつも不思議なエネルギーが宿っている」――THINGS THAT MATTERディレクター・武笠綾子はそう語る。
今回の対話では、その“繕い”の軌跡をゆっくりと辿っていく。 
Q.ネイルの世界に入ったきっかけは？
20年ほど前に初めて訪れたネイルサロンで、「常に視界に入る指先がキラキラすると、こんなにも気分が上がるのか」とシンプルに感動したことがきっかけです。その高揚を自分だけでなく、多くの人に届けたいと思い、ネイルの世界に進むことを決めました。
Q.ご経歴について、改めて教えてください
美容学校を卒業しましたが、その頃はまだネイル科があまりなかったので、美容師になる勉強をしながら、ネイルの授業をとっていました。細かい作業が好きなこともあってか、そのネイルの授業が楽しくてネイルが好きだと思うようになりました。美容学校を出たあとに改めてネイルスクールへ通い直しました。その間に両立して働いていたアパレルでも、尊敬出来る方々に囲まれてファッションや美容の楽しさ、色の感覚を磨かせてもらいました。その後、ネイルサロンで経験を積んで、12年前に独立しました。お店を持つことは、ネイルの世界に足を踏み入れたときからの夢でもありました。
Q.アート作品を制作するようになったきっかけは？
元々サロンを運営しながら、外部の撮影など様々な活動をしていたのですが、コロナ禍に営業ができなくなり、何かできることはないかと考えるようになりました。そのとき、お客様などから「自宅に絵を描いて欲しい」、「絵を描いてみたらいいのに」と言われていたことを思い出しました。コロナ禍で世の中が暗く沈んでいくなか、ネイルを通して色彩を届けることに限界を感じ、何か別の形で色を届けられたらと思って、現在のアート活動を始めました。
Q.表現で意識していることは？
お客様と話している中で感じる色や気分、こういうモチベーションにしていきたいといった抽象的なものを汲み取り、ネイルで表現しています。アート作品の制作や展示をするときには、自分の内感を表現することが多い一方で、オーダーではクライアント様の感情やコンセプト、飾る場所のイメージを聞いて表現することを大切にしています。ネイルやアートが何か力になったり、落ち着きを与えたり、内面につながったらと願っています。
また、この世界には、見えるものより見えないものの方が多いのではないかと考えています。わたしの目に見える部分は、みんな共通で見えているのかもしれない。だからこそ、表現をきっかけとして常にプラスアルファの付加価値をつけることを目指しています
Q.生きていく上で、大切にしている「感覚」は？
直感です。物事のはじまりに、例えば出会う人や、起こる仕事によって引き出される、ワクワクする感情や違和感といったもの。経験を重ねる中で、日々の流れにおいても潜在意識から生まれる直感が意外と当たることがあり、自分が思い描いた流れではないときにも、直感を大切にしていきたいなと思うようになりました。
同時に、直感を信じるためには、自分に正直でなければならないと考えています。自分を信じるためには、自分の人生に責任を持ち、自分を深く知っていく必要があるとも。直感を信じきれずに抗おうとするとき、無理やり乗り越えようとしても、流れに押し戻され、直感で感じていた方向に進む事になったり。必要の無い経験はないと思うのでどんな物事も受け入れますが、結果として直感があっていたのだと実感することが多いです。だからこそ直感を信じて、余計なことを考え過ぎず、なるべくシンプルに生きていきたいです。
Q.感覚を養うために意識していることは？
色々なものを見て、体験すること。SNSを通して世界を見ることが簡単になってきているからこそ、そうではない五感や、直接足を踏み入れることで感じられる感覚を大切にしています。日常のちょっとした出来事や、今の気持ちを意識して感じる時間を作ることで、当たり前に過ぎていってしまうような小さなことも幸せと感じることができるようになりました。元々小さな気持ちにも、どうしてそう感じたんだろうと気になってしまうタイプなのかもしれません。
Q.左脳と右脳のあいだ、魂と現実のバランスをどうとる？
クリエイションはぐっとエネルギーを一点に集中する行為だからこそ、魂から感じる感覚は自分の軸を保つうえで大切な力の注ぎ方でもあります。スピリチュアルも踏み込みすぎると、かえって自分自身が見えなくなってしまう気がするので、現実では視野を広くするために一歩引いて物事を見ることを心がけています。すぐには答えを出さず、一度あえて寝かせる事も。この現実世界を生きるときとクリエイションをするときの差を、ようやく上手くつけられるようになってきたような気がします。
そして、似た感覚を共有できる人たち、逆に全く違う感覚を持つ人たちとの交流にいつも助けられています。行動し経験を積み重ねることによって内面の深みが増し、自分に対するメタ認知も深まっていくのだと思います。ファッション業界にも少しいたからこそ、外見を繕う楽しさも知っていますが、THINGS THAT MATTERの内面を繕うお洋服にはパワーをたくさんもらっています。
Q.MANAMIさんの考える「ネイリスト」とは？
私の心掛けているネイリスト像は、毎月お客様と向き合いながら出来る限り連続で行っていくもの。だからこそ、ときによって見える色が違います。その方が出している周波数や波動のようなものに、プラスアルファした方が良いのか、共鳴させるべきなのか。施術をする約2時間、離席することも少なく、手に触れたまま会話をつないでいく。ネイルを通して、自然と相手を知っていく。ネイリストはそういう意味で、すこし特殊な仕事なのだと思います。色やデザインをどうしたいか、ひとつひとつ聞き出しながら、ときには、無理に元気なカラーにしなくても、心に寄り添う落ち着いたカラーも良いのではと提案してみたり。ネイリストは、心を紐といていく一種のカウンセラーなのかもしれません。
人に見られるためではない、自分のためだけのネイル。
指先から内面をそっと繕ってみたら、まだ名のない小さな喜びがふと訪れるかもしれない。
MANAMIさんは今日も、だれかの心の奥へ手を伸ばしつづけている。
MANAMI
2013年独立。
東京恵比寿にあるネイルサロンstudioLowaly オーナー。
Nail artistとしてモード誌をはじめ、映画やドラマ、CM、アーティストのnailなど多方面でnailArtを施 している。
2020年よりAbstract Painterとして本格的に活動を開始し、ブランドとのコラボレーションArtや国内外にて展示を行っている。
＠studiolowaly
@_man_ami_
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