MY SENSE #04
アートディレクター
土田あゆみ

2025.09.29
<br>MY SENSE #04 <br>アートディレクター<br> 土田あゆみ

経験から生まれるもの——
土田あゆみが紡ぐ感覚の現在地

日本で独立後にNYへ渡り経験を積み重ねてきたアートディレクター・土田あゆみ。SENSE 16のビジュアルでは、その視点から「過去・現在・未来」をつなぐ。

大学卒業後、広告業界での経験を経て、その後フリーのアートディレクターに。ファッションやブランディングを横断して活動するなかで、そこにはいつも参照点となる海外の「いま」があった。そして30歳を迎える頃、ニューヨークへ。現在はBangal Dawsonというクリエイティブスタジオを立ち上げ、ニューヨークと東京の2拠点で活動している。

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Q. MY SENSE——生きる上で大切にしている感覚は?


ずばりこれと言い切れる何かを持っているわけではないのですが、「経験」からくる感覚を大切にしています。ものを生み出す仕事において、アイデアは無から不意に出てくるのではなく、知識や経験に左右されるものだと思います。だからこそどれだけ多くの経験やインプットを重ねられるかを意識しています。私たちは日々、無意識のうちに何かをジャッジしていますが、その拠り所となる感覚もまた、経験に支えられているのだと思います。

Q. 良いものをつくる、その秘訣とは?


良し悪しを判断する軸も、知識の上に生まれると思っています。過去を知ることではじめて、今のこの時代に何がクールかを自分の中で判断できる。その積み重ねによって少しずつ養われてきたのだと思います。

Q. SENSE 16のビジュアルはどのように生まれましたか?


過去の自分は今の自分への、今の自分は未来の自分へのプレゼント(PRE-SENT)である——コレクションのコンセプトをどうキャンペーンアイデアとして表現できるか考える中で、混沌としたニューヨークの街で何か力強い表現ができないか模索していきました。「今の自分は、過去の自分の積み重ねである」その気づきから、今の自分が、過去の自分の象徴である証明写真のような巨大なポートレートを抱えていくという表現に行き着きました。

Q. インスピレーションはどこから?


ニューヨーク郊外にある「ディア・ビーコン」という現代美術館によく行くのですが、そこは大きな作品を中心としています。スケールによってインパクトが生み出される。その体験がヒントになって、等身大の人間ではなく顔を何倍にも大きく引き伸ばすことで、強い印象を作れるのではと考えました。

Q. 土田さんの目に映るTHINGS THAT MATTERの魅力とは?


ビジュアルで関わりながらTHINGS THAT MATTERは哲学的で、他にないコンセプトを持つブランドだと感じています。多くの人にとって服はどうしても見た目の好き嫌いで終わってしまいがちだけれど、その奥には思想や物語がある。だからこそウェブサイトに掲載されている記事を読んだり、アーカイブを通して時系列をたどってみてほしいです。読み進めるうちに「だからこの画なんだ」「だからこのグラフィックなんだ」と腑に落ちる瞬間がきっとあると思います。そんな楽しみ方をおすすめしたいです。


過去がいまを支え、いまの選択が未来を形づくる。ニューヨークのざわめきや日々の経験を手がかりに、感覚はかたちとなり、次の誰かへと静かに届けられる。
その循環こそが、彼女の現在地を形づくっている。


Ayumi Tsuchida |土田あゆみ
Art Director / Founder of Bangal Dawson
NY在住。2020年にクリエイティブスタジオBangal Dawsonを立ち上げ、現在東京とNYの2拠点で活動する。
@ayumit0