淡の間と武笠綾子の感覚問答 #06
男性性と女性性編<後編>

2023.09.29
淡の間と武笠綾子の感覚問答 #06 <BR>男性性と女性性編<後編>

武笠「それにしても、ホロスコープは本当に面白いよね。自分の基本プログラムというか、運命というか、こうやって説明されるとしっかり腑に落ちるもん。そういえば、さっき天体のことで、発達…なんて言いました?」

淡の間「天体の発達年齢域のこと?」

武笠「そうそう。人によっては、各年齢域の課題として現れる発達年齢域のテーマを受け入れたり向き合えずに終わる人もいるんですか?」

淡の間「あのね、それはなかなか難しい問題で」

武笠「うん」

淡の間「各年齢域によって授かっている自分の内にある天体の影響・テーマについて、何を経験してどう育てていくかという過程は皆んな同じようにあるんですけど、話を聞いてみるとその時の自分がそのテーマに対してなかなか肯定的に受け止められないこともあって。その時に対峙していることって、なかなか理解できないんですよね。おそらくそんなことも含めての基本プログラム(個人のホロスコープ)なんですけど。あとは、うまく(自分の)課題を理解できなかったその当時の自分自身の成長過程を受け入れられなかったりすると、のちのち説明しても自分の運命が自分のことだと思えなかったりもするの。そういう風になってくると難しくて、結局誰かがやってくれるでもなく自分でなんとかしなくちゃいけないことが延々と積み重なっていくだけだから、夏休みの宿題がどんどん溜まっていくみたいになる」

武笠「自分で決めてきたことなのに、向き合えないで放置するとそうなるってこと…?」

淡の間「そうだね。結局誰かが決めたわけじゃなくて自分で決めてきたことですから、人生は。そうすると今自分はこれをやらなきゃいけないのに、前やっていなかったことのせいでこれに手をつけられないとか。今これに向き合わなきゃいけないのに、向き合えるまでのレベルの状態になってないとか。だから目の前を快速電車がビュンビュン走っているとする。乗るかどうかは自分で決めることができるし、必ず必要なタイミングで扉が開いて快速で目的地まで運んでもらえるとします。同じように、星の影響としてのチャンスも皆んな平等に与えられているのに、個人差があるように見える。ある人は進んで自分から流れに乗る、でもある人は同じような状況を与えられているのにもかかわらず全然乗れていない。あるいは、同じ誕生日なのに全然違う人生みたいな。一方の人はとても幸せで、一方の人は大変な苦労をしている。でも外側からみたら同じようなことを経験しているみたいなこともあったりする。それはタイムツインっていうんだけど」

武笠「うん」

淡の間「誕生日が近いのに星占いの結果が違うっていうこともよくあるよ。その日の占いが一位って書いてあったのに最悪だったみたいな。それは精神性の成長の違いや、自分の運命にどのように向き合って来たかどうかという経験値の違いが影響していると思います。ホロスコープのリーディングとかしてても自分の星の話なのに全然自分ごとだと思えない人とかもいたりする。片や、”これはまさしく自分の人生の物語”だなって、星を通して自分の人生の答え合わせをしている人もいる。もちろん、読んでみないと分からないけど」

武笠「なるほど」

淡の間「ホロスコープのリーディングって、自分が決めてきた運命の図を翻訳するようなことだから、人によって気にかかる部分とか解釈の奥行きも違いがあって面白いですね。私は昨年から占星術のクラスを開講しているんですけど、それは何よりも自分で星が読めるということは本当に面白いことだから。これまでの世界の成り立ちに思いを馳せる入口にもなるし、生涯学習になる。あとは自分にしか分からないような細かい出来事や性格の部分も解釈できるし」

武笠「そうだねー、読んでもらうたびに違う発見がありますもんね」

淡の間「あとはホロスコープ以外にも、これまで私がやってきたプログラムや仕事は、私がいなくてもその人自身が自分で自立する方法を一緒に模索するようなこととか、今まで取りこぼした自分の課題をもう一回整理するとか、何を取りこぼして来たのかを自分で確認するっていう効果を狙って行ってきました。そもそも、私にとってのホロスコープの使い方って、自分で自分を受け入れるための答え合わせというか、当たるか当たらないかよりも重要なことがあると思う。そもそも、自分の運命の奥行きとか伸び代って人それぞれ違うものだしすごく複雑ですからね」

武笠「面白いなあ」

淡の間「面白いですよね」

武笠「深くて面白い本当に。全然洋服の話してないね(笑)」

淡の間「今回はどんな生地を使って、みたいな話とか全然してない(笑)」

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武笠「今回のSENSEもそうだけど、振り返ってみるとジャーナリングは大切なインスピレーションになってるよ。吐き出す、書き出すっていう行動もまた、自分から動くことだから男性性の行動だよね」

淡の間「そうそう。まずは自分の考えていることを話してみるとか、ジャーナリングによって書き出してみるとか、出すことが大切。それで自分がどんなことを考えていたのか、溜まっていたのかとか、初めて客観視できるから。失敗とか成功じゃないからまず出すことを安心してやっていく。そうすると、ああ私ってこんなこと考えていたんだとか、私はこういう人間だったんだとか、徐々に分かってきて、するとだんだん安心していく。安心することで癒されていくんですよね。それが私が思う自己受容というか、健康的な循環が回っていくことなんですよ」

武笠「うんうん。そうだね。それが自分で出来る様になるのが理想だね。改めて、自分のここ数年の行動が無意識に自分の男性性を意識する結果に繋がっていたかも。服を作ることもアウトプットであり表現なんだけど、あまり男性性を意識していなかったかもしれないから」

淡の間「自覚的になれるのはいいですね。シンプルだけど、ジャーナリングって実はとても効果的だと思っているんです。どんなことでも言いから書き留めておいたり、自己対話していくことで自分のことが分かってくるし安心して出せるようになってくる。そして、思い切って出した(書いた)自分のことを受け止められるようになってくるっていうことは、自己受容の部分である女性性が健康的に回っていくことになるじゃないですか。持っているエネルギーって共鳴するから、いくら頭の中で感あげていても結局自分の行動の結果が全ての現実を引き寄せてしまったりする。つまり、出せないし受け止められない状態って、私からすると不健康な男性性と女性性を持っている状態になっちゃうんですね」

武笠「うん」

淡の間「で、どっちかが良ければ良いわけでもなくて、どちらかがうまく出せない・受け止められないとか、不健康な状態だと結局どっちも不健康になっちゃうんですよ」

武笠「正しい行動の仕方、正しい受け止め方が分からないと、どんなに幸せを願っていたとしても自分にとって望まない現実を引き寄せてしまうってことだよね?」

淡の間「そうそう、そんな感じ。特に男性性的なエネルギーの場合、どう出して良いのか分からないから乱暴なことをしたり威圧的な行為をしたり、支配的な行動に出てしまったりすることもある。受け止めてもらえる自信もないから取り敢えず自分を強く見せる、高圧的な態度になる、みたいな。話題になる国際的な政治家とかもそういうの現れますよね、男性性のネガティブの象徴みたいな感じが。でもそれに対して女性性のネガティブさって、どんなひどいことをされても我慢しちゃって時自分が被害者意識の象徴みたいになっちゃうというか、モラハラカップルってそんな感じだよね。奪いたい人と奪われたい人が質として惹かれあってしまうというか。健康的な感じではないですよね。労働環境とかもそうかも。女が男がというよりも、ネガティブな社会の縮図だよね。

武笠「分かるわー。あとは、そういう強烈にネガティブな人が権力を持っているとするじゃない。それがネガティブな男性性の集合意識の塊みたいなものだとして、そういうものがそれぞれ与える影響とか関わった人を通して引き摺り出されるものって、同じ質を持っている同志が反応し合うのかとか。そういうのってあるんですか?」

淡の間「そうですね、やっぱり引き合ってしまう部分がありますよね。でも、100%の正しさも、聖人君子みたいな人も清廉潔白な人もいないから、みんな怒りん坊の自分もいるし全部自分の思い通りにしたいっていう悪い自分もいて当然だから、嫌だなあって感じる対象ほど自分の嫌な部分を投影していますよね。でも、同じく愛を持って生きたいっていう光の部分もあるじゃないですか。だから誰かにとっては最悪な人でも誰かにとっては希望というか救いの部分があるんだろうな、と。そうであってほしいよね」

武笠「うん」

淡の間「その人にとっての善悪の基準とか概念っていうものもすごく曖昧なんだけど、男女性というものが単純に肉体的な性別の話ではないのと同じように、善悪の部分も誰の中にもあるんですよね」

武笠「うん、あるある」

淡の間「綺麗な部分だけじゃないからこそ、美しいってところもあるしね。まあ、難しい問題なんですけど。旧時代的とかいうとあれなんですけどね。でも、今は世の中が混乱しているっていうか、どうやって自分のエネルギーを扱っていいか分からない、自己表現していいか分からない、みんなと上手くやって言ったらいいか分からないみたいな時期ですよね。コロナがあって一旦いろいろ切り替わったように見えてまた戻っている感じもするし」

武笠「うん」

淡の間「綺麗事とかおいといても、結局みんな自分の思い通りにしたいんだなって。他人の事なんてどうでも良いって言うとあれなんですけど、自分の正義を譲りたくないっていうか」

武笠「そうだよね」

淡の間「ひとりひとり、誰しもありますよね、譲りたくないものとか自分を尊重して欲しいこととか。あるけど、それをさておき自分が愛する人にもそんな対応ができるのかとか。そういう一つ一つへの心掛けが変わってくると、世の中全体の空気って変わってくると思うんだけど。今、自分をどう受け止めていいか分からない人達や、あるいは自分をどう扱っていいか分からない人達が多すぎて、そういうネガティビティの塊みたいなのがそういうネガティブな投影になって具現化しちゃって、嫌なニュースとかになっちゃうんだろうなって思うこともあるし、そうやって誤魔化されて形骸化したいろんなものが浄化されようとしている時期だとも思いますよ」

淡の間「そう。だから無いわけではないじゃないですか。少なかったり多かったりするけど、だから何らかのきっかけで自分の中の陰陽太極図みたいなものがあるとしたら、例えば女性性が多いとしたら白がめっちゃ多くて黒が少ない。男性性が多いと黒がめっちゃ多くて白がめっちゃ少ないみたいな感じだとしたら、やっぱり同じ量でこそ自己統合が出来てるって状態だとするじゃないですか。さらに言うと健康的なバランスで。だから何らかのきっかけで今まで出した男性性の量のバランスを取るためにどっかで女性性の量が出てくる。で、その中で発散できなかったものが出てくるタイミングっていうのはそういう所にあるのかなとか」

武笠「うん、そうだね」

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淡の間「パートナーシップとか恋愛や人間関係を通して見えてくることって、もうほんと、自分の中にある元型的な女性性と男性性の影響があるんですよね。自分が今まで育ってきたルーツの中でつくられてきた男性性と女性性のイメージ、元型があるんですよ。それが自分の中の磁石みたいなものになっているんですよね。共鳴させて惹きつける磁石みたいなものになっているとしたら、目の前の自分が出会った愛する人や誰か対象っていうのは、自分の中にある質がそのまま現れているということ。”その人”という姿をした自分の中の男性性と女性性で、自分に対して一番距離が近い人ほど見せてくるものが大きいというか、嫌悪感を感じるものほど自分の中にあるものを著していると思う。仕事の仲間とか友人関係とかも同じ。類友の法則と結局一緒」

武笠「そうそう、それが前に聞いた話としても印象に残っていて、それが今回のSENSEとして、自分の中に存在している男性性の表現というか、投影のようなものがインスピレーションになった。私にとっての男性性のモデルになった人たちを通して生まれたクリエイションです」

淡の間「武笠さんを作った人たち、共鳴した人たち。その結果のコレクションっていうことですもんね、今回のSENSEは」

武笠「うん」

淡の間「それを制作していく上で印象的だったことってありましたか?武笠さんの中でこの『Ka-re(彼)』っていうSENSEを作った過程とか、そこに行き着いたインスピレーションは、きっと自分の中にある男性性を良い意味で分離させたというか。本当の意味で精神的な臍の緒を切ったみたいなプロセスがあったのかなあって感じたから」

武笠「そうですね。まず、子育て中ということもあって、自分は親からどうやって育てられてたんだろうと振り返っている最中なんです。子育てを通して追体験しているというか。自分の中の創造的な活動の部分は父親からの影響が強いと思うんだけど、その父親という自分の中の男性像に対して、こうなりたいこうなりたくないっていう葛藤や矛盾を思い出しながら、もう一つの男性像として、今は息子に向き合っている最中という」

淡の間「そうですよね。父親って絶対的な影響というか、なりたい自分もなりたくない自分も全部そこから来ていたりしますもんね」

武笠「うんうん。そうですね」

淡の間「私はまだ子どもはいないけど、自分を映す鏡としての子どもの影響って凄そうだし」

武笠「そう、すごいんだよね。息子とは体調やメンタルも含めてものすごく繋がっているのが分かるの」

淡の間「すごい、神秘的!」

武笠「もう、本当にすごいよ。息子が生まれたことで人生観が大きく変わったから感謝しています」

淡の間「あとは、どんなに頭の中で幸せになりたいとか素敵な物を作りたいとか思ってても、心の中では幸せになっちゃいけないんじゃないかとか、私に良い物なんか作れないんじゃないかっていう気持ちって出てきたりします?」

武笠「ありますあります、全然」

淡の間「それって勿論、人それぞれ大なり小なりあると思うんだけど、武笠さんの場合はお父さんから作られた部分でもあるのかな」

武笠「すごいあるよ。お父さんが写真を撮る人で、いつも私の写真を撮ろうとするのが嫌で仕方なくて、結局今でも自分を表に出すことができない。今はもう父はいないけど、もっと素直になれば良かったと思ってる」

淡の間「親と子の繋がり、自分に影響を与えた人との繋がりや潜在的な影響力ってすごく強いよね。結局、本当の自立って勿論金銭的なこともあると思うけど、親より幸せになっていいとか、親が与えてくれた課題を乗り越えていくことなんだろうなって思うんです」

武笠「うんうん」

淡の間「自分が何の為に作り続けるのかとか、何の為に仕事をし続けるのかって人それぞれ目的はあるだろうけど、どこかで自分のお父さんお母さんに褒められたかった、認められたかったという気持ちがある人って多くて、わたしも多分そうなんですよね」

武笠「うん、分かる」

淡の間「あの時お母さんにもっと褒めて欲しかったとか、こうすればもっと褒めてもらえるかなみたいな気持ちで今でもやってたりすることもある。でも、例えば親がここに居なくても褒めてくれなかったとしても、私は私の仕事が出来たなとか自分の幸せを選べたなって思った時、初めて元型的な男性性と女性性像と分離できたというか。あ、自分で自分の人生をしっかり作れているかもみたいな達成感がある。勝手に私が思ってたことだけど、これも今回のSENSEの話と少し繋がったね」

武笠「本当に!」

淡の間「でも以前から(武笠の)お父さんがカメラマンをやってて、写真に撮られたくなかったとか、凄く反発しちゃったみたいな話を聞いたじゃないですか。でも、あえてここで男性性っていうテーマを決めてSENSEにしたのは武笠さんの中に分かりやすい変化があったのかなあって思ってね」

武笠「うん、あったね。頭で考えていたことと、心のなかで思っていること、実際に自分の現実で起こっていること、出会った人、全てを通して”男性性”というテーマに向き合ってきた中で、自分の中にあるコンプレックスや課題に対面しながら表現したこと。今だからこそ、これが出来た感じはする」

淡の間「これはホロスコープでいうと、土星だね。自分の人生の課題でもあり、父性的な元型でもある部分」

武笠「土星かー。私の場合のテーマはどんなんだっけ?」

淡の間「じゃあ、それは今度また話しましょう!」