MY SENSE #08
ヘアスタイリスト / 「TWO」ディレクター
YANAGI AYAKO

2026.07.24
<br>MY SENSE #08<br>ヘアスタイリスト / 「TWO」ディレクター <br>YANAGI AYAKO

感覚の「感」と、自身の「勘」。自分を信じて進む、嘘のない生き方。
ヘアスタイリスト / 「TWO」ディレクター YANAGI AYAKOさん


【自分らしさを大切にする】東京・表参道のサロン「broocH(ブローチ)」で約20年間、ディレクターや店長として活躍し、2021年には社内ブランド「Sraw(スロウ)」を立ち上げた柳さん。2026年6月には完全に独立し、自身が暮らす鎌倉の地に新しいサロン「TWO(トゥー)」をオープンされました。

プライベートでも親交が深く、柳さんに髪を任せ続けている「THINGS THAT MATTER」ディレクター・武笠綾子。今回のMY SENSEでは、大きな変化の渦中にあった独立までの道のりや、直感を形にしていく生き方、そして自分を客観視したファッションへのこだわりについて、言葉を交わしました。

01. 「もっと先へ進みたい、自分を大切に生きたい」と立ち止まった日から、完全独立への怒涛のカウントダウン

Q. 2026年6月に鎌倉に「TWO」をオープンされましたね。完全独立に至るまでの歩みについて教えていただけますか?
高校生の時に初めて代官山に降り立って、その海外のような古いビンテージショップが並ぶ街並みに惚れ込み、「このエリアで美容師になる」と決めたのが私の原点でした。早くにスタイリストデビューしたことで、20代半ばで一度やりきった感に包まれた時期もありましたが、ご縁があって原宿・表参道のサロン「broocH(ブローチ)」に加わり、そこから約20年。ディレクターや店長を務め、2021年には社内ブランドとして「Sraw」を立ち上げました。

転機となったのは2025年(去年)のことです。組織の中に身を置く中で、人のことで頭を抱えることが多くなり、「私が本当にやりたかった美容師人生って、こういうことだったのかな」と、前に進めなくなってしまっている自分に気づいたんです。そもそも近いうちに拠点を鎌倉に移したいと考えていた中で、ずっと組織に守られてきたけれど、一度きりの人生、完全に一人で独立してやってみようと決意したのが去年の秋頃でした。

そこからはまるで宇宙に背中を押されるような怒涛のスピードでした。翌年2月にたまたま見にいった鎌倉の物件に一目惚れしてすぐに申し込み、3月に退職と新サロン「TWO」の立ち上げを発表。そして6月、ついに自分のすべてを詰め込んだお店をオープンすることができました。何か大きな力に引き寄せられるように、点と点が繋がっていく感覚がありましたね。

02. 緻密な計画よりも、心が動く方向へ一歩踏み出す

Q. 鎌倉への移住や、過去の短期ニューヨーク滞在などもそうですが、柳さんの行動力にはいつも驚かされます。
実は私、人生における大きな出来事に対して、あらかじめ緻密な計画を立てるようなことはほとんどしないんです。

2006年頃、一度仕事を辞めてニューヨークに3ヶ月ほど行ったときもそうでした。最初は周囲に「ロンドンに行く」と言っていたのですが、たまたま創刊されたばかりの雑誌『NYLON JAPAN』に載っていた本国の大人っぽく洒落た空気感に強く惹かれて。「あ、ニューヨークが面白そう」という衝動だけで、アメリカにさほど興味がなかったのに航空券を手配していました。結果的に、その旅が私の美容師としての感性を大きく広げてくれることになります。

鎌倉に住まいを移したのも同じです。東京にずっと住む気満々で引っ越した直後だったのですが、友人が鎌倉に移住したのをきっかけに「東京じゃなくてもいいかも」と、なんとなく直感で決めてしまいました。

先々の計画を完璧に立ててから動くのではなく、「いいな」「楽しそうだな」と心が動いた瞬間に、まずは一歩を踏み出してみる。その軽やかさが、私の人生の選択をいつも面白い方向へと導いてくれています。

03. 煮詰まった時は、あえて全く異なる環境へ身を置いてみる

Q. 計画よりもまずは動いてみるという柳さんですが、先ほど「去年は考えすぎることが多かった」とおっしゃっていましたね。そうやって悩んで煮詰まってしまった時は、どのように自分の状態を保っていたのでしょうか?
去年は本当にスイッチの切り替えが必要な時期でした。そんな時、私は2泊3日とかの本当に短い「ショートトリップ」でベトナムへ行ったりしていました。

私は英語も全然喋れないのですが、言葉も、漂っている匂いも全く違う場所に身を置くと、強制的に頭のスイッチがパーンと切り替わるんですよ。

大人になると、若い頃のように目の前の出来事にただ落ち込むだけじゃなくて、なんとなくいろんな「対処法」や「回避策」が分かってくるじゃないですか。私は悩んでいる時間がもったいないと思ってしまう。1ヶ月間ずっと悩んで終わっちゃったらもったいないから、そういう術を使って、どうにもならないことは一度旅行でパーンと消し去るようにしていました。

04. MY SENSE:感覚の「感」と、自身の「勘」

Q. 続いて、この連載共通の質問です。柳さんが生きていく中で、一番大切にしている「感覚」は何ですか?
私が一番大事にしているのは、感覚の「感」と、自身の「勘」です。

誰かに何かを言われたからではなく、自分が本当に「この絵が好きだな」「この空間が心地いいな」と感じる【感】。そして、何かを選択するときに、根拠はなくても「こっちに進んだ方がいい」と教えてくれる自分だけの【勘】。私は常に、この二つの力を信じて生きています。

もちろん、世の中には素晴らしい占いがあったり、周りからのアドバイスがあったり、頼りたくなる要素はたくさんあります。でも、どれだけ迷ったとしても、最終的に自分の人生を引き受けるのは自分自身。自分の感覚と勘を信じるしかないと思うんです。

自分の内側から湧き出る「感」と「勘」を鈍らせないために、常に心をクリアにしておくこと。それさえできていれば、どんな試練が訪れても、迷わずに次のステージへ進んでいけると思っています。

05. 自分を客観視して、心地よい「マイルール」で装う

Q. 柳さんの毎日の私服やインスタグラムでのコーディネートも大好きです。お洋服を着る上で、意識していることはありますか?
特定の「〇〇系」という系統に絞ることはせず、その日の気分で変えることが多いですが、大切にしているのは「清潔感」と「すっきりと着ること」です。

誰しも体型へのコンプレックスはあると思いますが、私の場合は上半身が華奢で下半身にボリュームが出やすいタイプ。だからこそ、トップスは少しタイトめにして全体のシルエットをすっきり見せるなど、自分の体型に合わせたバランスを大切にしています。

また、自分の中でいくつか明確な「マイルール」を設けています。例えば、顔立ちが少し幼い印象になりがちなので、オレンジや黄色といった暖色系は子供っぽくなってしまうから選ばない。ミリタリーすぎる強いカーキは顔色がくすんで見えるので顔まわりには持ってこない。Tシャツを着るにしても、生地が厚くてパキッとしたロゴTは「子供おばさん」のようになってしまうから避けて、クタッとしたニュアンスのある古着のTシャツを選んで、肩のラインを少し見せる。

「自分がどう見られたいか」よりも「今の自分をどうすれば一番引き立てられるか」を客観視し、心地よいバランスを探る。その小さなマイルールを積み重ねることが、大人ならではのファッションの楽しさなのだと思います。


計画や予測に縛られず、自分の「感」と「勘」が動いた瞬間、まるで風に乗るように進むべき場所へ飛んでいってしまう柳さん。普通なら躊躇してしまうような大きな選択を、直感のままに決断し、形にしていく圧倒的なスピード感は、彼女自身が自分の選択にどこまでも嘘がなく、責任を持っているからこそ放たれる強さです。

だからこそ、武笠が「寝ていても、オーダーをしなくても、完璧に自分に似合うスタイルをはめてくれる。髪を綺麗にしてもらいに行くだけでなく、柳さんに会いに行って感性の刺激をもらっている」と語るように、彼女の手から生み出されるデザインには、おまかせしたくなるほどの絶対的な説得力と愛が宿っています。

頭であれこれと考えすぎて足が止まってしまいそうな時。彼女の潔い生き方は、私たちに「もっと自分のセンサーを信じて、心の動く方へ一歩を踏み出していいんだ」という、心地よくも力強い勇気を与えてくれます。


今回の取材では、【SENSE17 Chaos】コレクションより 宇宙の真理や悟りの世界を意味する「曼荼羅(マンダラ)」や「陰陽の調和」などの世界観を意識した、オリジナルデザインの刺繍が特徴のシャツと、ワンピースとしてもスカートとしても着用可能な2WAY仕様のDRESS & SKIRTをご着用いただきました。
CHAOS EMBROIDERY BLOUSE

TWO WAY GATHERED DRESS & SKIRT



【プロフィール】
YANAGI AYAKO
@ayakoyanagi

都内サロンを経て
2026年6月鎌倉に自身のヘアサロン"TWO"をオープン
ヘアケアブランド"TAU"のプロデュースも手掛けている