淡の間と武笠綾子の感覚問答 #11
カオスについて、愛について

2026.04.30
<br>淡の間と武笠綾子の感覚問答 #11<br>カオスについて、愛について

淡の間:今回のSENSEのコンセプトについて、武笠さんにとってのカオスって一体どんなことなのかを聞いてみたいです。

武笠:えーとですね。”自分ではコントロールできない大きな何か”というのが私の中のカオスです。頭の中で想像しているものを越えてくるというか、とにかく想定できないこと。流れそのものに突き動かされているような感覚というか。

淡の間:必死に生きていればこそですね。

武笠:そう。あとは私が淡の間さんと出会った 2020年ぐらいから、いわゆる魂の成長というか、そう言う漠然としたことを意識し始めながら生きるようになって。その思いがデザインと並行してずっと日常のテーマだったんですけど、それからTHINGS THAT MATTER(以下TTM)を始めて今年で 5年になります。

淡の間:早いですねー。

武笠:本当に早い。それで、魂の成長段階というものがあるとしたら一つ問題が出てくるたびに乗り越えて、その都度いろんなことを経てまた成長したなって思えるんですけど、その渦中にいる時はなかなか気がつけないんですよね。しんどいことを必死の思いでやっと乗り越えたと思ったのに、一難去ってまた一難。一息ついたのも束の間で新しいコースが出てきて、またそれを乗り越えて、みたいな。

淡の間:自分の経験の範疇を超えた状況に出くわすと、もはや流れに身を任せるしかないみたいな。そういう境地になりますよね。

武笠:そうなんです。目の前の出来事を乗り越えながら価値観が生まれ変わって魂がアップデートしていく様子を身をもって体験した、自分の数年間の記憶を閉じ込めるというか…表現してみたくて今回のコンセプトを「カオス」にしました。

淡の間:いいですね。カオスって人生そのものですね。起承転結、4コマ漫画的なもので言うとやっぱり承、転のあたりが特に「カオス」なんですよね。何かが起こり、場面が転換し、最後に着地するみたいな。その着地がつまり「コスモス(秩序)」というか。

武笠:いかにして混沌とした状況を目に見える結果にするとか、着地させるかみたいなこと

淡の間:そう。西洋占星術的には物事の流れっていうのは三段階あって。それを「行動様式」っていう風に言うんですけど。何かが起こり、それを継続させ形にし、柔軟に変化させながらまた新しい流れが始まるという。活動・不動・柔軟ってずっとぐるぐるしてるんですよ、この世の流れというのは

武笠:なるほど

淡の間:で、何が言いたいかというと、ずっとカオスし続けてるみたいな感じなんですよね。生まれてから死ぬまでずっと私たちカオスの中に居続けてるっていうか。そこでたまたま止まり木のような落としどころを見つけているだけじゃないですかね

武笠:たまたま息継ぎしているだけなの、分かる。

淡の間:占いの現場だと、どうやったら私の人生は落ち着きますかとか、どうやったら幸せになりますかみたいな相談ってすごく多いんですよ。気持ちはわかるんですけどね。でも、私的には安定なんか存在しないんじゃないかなって。全ての流れっていうのはずっと動き続けているから。何を持って安定と言うのかそれは人それぞれの価値観なんだけど。

武笠:あー、分かるねえ。

淡の間:悩みができるとまた次の悩みが生まれて、いつかの自分の目標が叶っているはずなのにその中でまた悩むの。

武笠:でもやっぱり安全神話的なものというか、形になることや、わかりやすい安心の形を求めちゃうのが人間じゃないですか。そもそもカオスな状況とかまとまっていない状況を悪いものとかよくない状態って感じる人は多いのかも。漠然とした罪悪感すら感じるというか。

淡の間:占いに来るお客様が「全然話がまとまってないんです」とか「何から話していいかわかんないんです」とか「全然取り留めのない話ですいません」みたいなこと言ったりするんですけど、全然それでいいんだよ。逆にそれを整理する場だしそれが悪いことではないからって思います。

武笠:私も何話してるのか分からなくなる時あった。

淡の間:一生懸命生きていたらカオスになっちゃうんですよ、私も(笑)

武笠:カオスって嫌がられるものってなんとなく分かる気がする。なんとなくネガティブなワードというか。



淡の間:武笠さんはカオスな状態の自分のことをどう思います?

武笠:私の生き様がもうカオスだと思います。カオスがなくなっちゃったら生きてる感覚がなくなっちゃうんじゃないかなって。落ち着きたいなんて思ってない。なんならそういう状態の自分が好きだとすら思うんですよね。

淡の間:たくましい。

武笠:あっ、言いたかったことが出てきた!カオスな状況を嫌わないで楽しみましょうみたいなことがTTMとしては一番のメッセージなんですよ。それをうまく伝えられればいいなって。

淡の間:メタ認知って言葉、あるじゃないですか。物事を俯瞰する、めっちゃ引いて見る、みたいな。武笠さんはカオスな自分をメタ認知できているからそう思えるのかも。視点が狭くなってる状態はなかなか俯瞰できないんですよね。でも引きで見てみると、その混沌も含めて秩序の一つっていう。

武笠:昨年のインタビューで窪塚(洋介)さんも言ってましたよね。どんな状況も上から見るとこういう構成になっているって。全ては流れの一つとして点と点が結ばれる瞬間が来る。当事者的にはなかなか受け入れられないこともあるんだけど。

淡の間:クリエイティブな仕事をしてる人っていうのはその感覚が常にあると思うんですよ。断片としてどうつなげて一つの形にするかみたいな。

武笠:カオスの中にいながらその状況を天然な状態で楽しめてる人の強さってうらやましいな。引きで見て綺麗にまとめるのではなくて、先の展開が分かりすぎちゃうと面白くないんだよね。

淡の間:また占いの話するけど、結果として「なるようになるから」とか言われるとすごいつまんなくないですか?そんなの分かってるしその過程を知りたい。だから来てるんだよって(笑)

武笠:あるよね。ご縁がなかったんだからとか言われると、それは前提として分かるよ。それでも今の私はどういうコースを泳ぎながら溺れているのかとか、今のカオスはどういう意味があるのかを知りたいのって思う。もうさ、占いとかスピリチュアルな本とかには大体同じことが書いてあるじゃない。だからそんな分かりきった綺麗事はいいんだよって。

淡の間:本当にそれタイムリーなテーマなんですよ。私、始めた頃からずっと独学だから自分の占いのスタイルを試行錯誤してて。とにかく自分の色を作りたかったので、占い師始めてから一切人の占いを受けずに過ごしてたんですよ。でも去年ぐらいからやっと「あ、今なら受けれるかも」って思って、他人の占いを受ける心の余裕が出てきたんですよ。この人だったらどう見るんだろうと、今の自分が見ている世界のことを答え合わせ的に理解できるなって。

武笠:そうだったんだ!

淡の間:そう。それがまあ楽しくて。いろんな占術の人に片っ端から占ってもらったんだけど。でも慣れてくると何を見てこの人その話してんだろうとか、ああ、そういう風に見るんだみたいなことが透けて見えるようになってしまって。面白い、楽しいっていうフェーズがすぐに終わって、相手の心を逆に読めるようになってしまって。嫌なやつだなと。とにかく占い師としてどうありたいかをとことん考える機会をいただきました。

武笠:何それ(笑)

淡の間:当たり前だけど世の中にはいろんな占い師さんがいるの。それで、もちろん敬意を持って占いをしていただくんだけど、たまにそれは占いじゃなくてあなたの主観の話だからちゃんとそれ占ってますかとか、なんでそのカードが出ているのにそう言う風に思うんですかって思うことがあるの。それを聞くと向こうが機嫌悪くなって終わるみたいなこともあって。そう言う道場破り的なことをやってたんです。

武笠:それっていつの話?私も去年、別の意味で道場破りやってたよ。

淡の間:別の道場破りって何(笑)

武笠:私たちって同じようなことを体験している流れがあるのかな。 昨年秋ぐらいからずっと。

淡の間:そう、私もまさにそのくらいの時期から向き合ってました。

武笠:会ってない間はお互いに同じようなことやってたんだね。その間に色々なことに出会ったよ。でも、やっぱり究極的には自分のことは自分で決めるから。悩むけど残るものは自分の真ん中のところにしかないなーと思って。でもまたそれを求めて思考の海の中を泳ぎ続けるんですけど。

淡の間:そうかもしれませんね。占いって万能の誰かが答えを教えてくれるものではなくてルートマップ的な感じで使うといい。

武笠:答えに着地するにはいろんなルートがあるって、言ってたよね。

淡の間:そう。その答えを自分で設定することが大切。でも私は現実世界だとすごい方向音痴だからすぐ Googleマップ使っちゃう。東京なんか来るともうほんとカオスっていうか自分がどこにいるかもわからなくなる方、理想は Googleマップを使わずに動くこと。自分の感覚を頼りに歩くみたいなことに憧れます。ちょっと前はそれが当たり前だったのに本能がダメになってます。

武笠:それも一つ、カオスを乗り越える成功体験的なものだと思うんですけど、自信がつくよね。運転してると自然と道を覚えるのと同じでさ。

淡の間:本来持っているはずの本能的な感覚に従って生きていけるといいよね。時間の感覚も含めて。

武笠:スピリチュアルの先生とか占い師の人たちが矛盾してるのがめっちゃ好き。例えば瀬戸内寂聴先生みたいな、言ってること前後で全然違うじゃんみたいな。ああいう矛盾が人間っぽいっていうか本人もたっぷりカオスの中にいる生っぽさを感じる。あと、占い師は自分を占えない設定みたいなのあるじゃない?あれはどうなの?

淡の間:どうなんでしょうね。私は自分のことは占いますけど、いろんな人がいますね。やっぱりそれも含め経験だってことなんでしょうね。

武笠:食事とかも、まっさらでクリーンでストイックなのも憧れるけど、ヴィーガンなのに菓子パン食べて生理前はカップラーメン食べるみたいな独特の相殺してる感じが人間らしくて好き。

淡の間:バランスだよね。綺麗事だけ言ってても面白くないもん。生き様ですね。

武笠:スピリチュアル的によく言われたりするのは自分に返ってくるから誰かの悪口を言わないとかそりあえず感謝しろとかあるじゃないですか。でも嫌だと思ったことは嫌だし、その時に感じた自分の気持ちを感じきらないとその先には進めないな。スピリチュアルをかじりすぎるとつまんなくなりますよね。なんか全部愛になるみたいな、でもさ、そんなこと言っても生きてるといろいろあるじゃない?

淡の間:綺麗にまとまりすぎるとつまらないっていうのは、今後ますますそういう傾向は出てくると思う。 AIが出てきたことで私たちもちょっと目が肥えてきて「これ AIが作ったっぽいな」とかわかるじゃないですか。人工的というか綺麗すぎるやつ。絶対的な秩序で成り立っていると言うか。でも人間の生き様ってそんなに予定調和的じゃない。生っぽさがあって当然で、それこそがカオスの状態なの。混沌としている自分のことを避けたくなるっていうのは人間の生っぽさをなくすみたいなことでもある。

武笠:それって昨今のルッキズム的な問題とか、あとは芸能人とかスポーツ選手とか表に出る人に対して清廉潔白な振る舞いを求めるじゃないですか?交際関係だとか、口調や喋り方とか、服の着方だとか振る舞い方みたいな。言ってることはわかるんですけど度を越えた指摘が増えたよね。

淡の間:境界線が曖昧な時代ですよ。だからこそエモーショナル、情緒的なものがきっと求められていくよね。私からすると一番エモなのは芸術もそうだけど人間関係と恋愛だと思うな。

武笠:恋愛も仕事も含めて人間関係って一番コントロールができないからむずかしくて悩む。自分のこと、例えば仕事とかだったら自分がどうすればいいかを考えたらいいからわかりやすいけど、相手の気持ちも入ってくる混沌とした状況ってややこしいのよね

淡の間:私、ずっと恋愛相談とか受けるの苦手だったんですよ。自分のことはさておき相手の気持ちをコントロールするのって難しいから。

武笠:うん。しかも、うまくいかないとご縁がなかったみたいな風に簡単に片付けてしまいがちだけど、恋愛とか人間関係って一番と人間成長の場でもあるよね。今まで自分が信じていた価値観が相手との出会いによって変化しやすいから

淡の間:そうですね。その対象が仕事でも恋愛でも子育てでもなんでもいいんだけど、ドキドキしたり、ワクワクしたり、自分が見たことのない世界を見せてくれることがあるって幸せ。自分の今までのパターンが変化していくカオスでもあるんだよ、それって楽しくない?って思えたら楽だけどそうもいかないことがありますね。

武笠:生きてるって感じだね。

淡の間:私自身、毎日カオスです。うん。今日は何曜日だかわかんなくなりますもん。それが生きてるということじゃないかなって思ってしまいますよね。悟れない。上がりなんてものは来ないんだなって思っちゃった方が楽。



武笠:唐突なんだけど実は私、今日夢で死んだんですけど。

淡の間:ええっ、そうだったの?

武笠:飛行機で墜落したんですけど、あれ、飛行機じゃないな。乗り物に乗ってたら辛くなって、ああ死ぬかもって思ったのに死んだかどうかわかんなくて。パッと次の瞬間がモノクロの世界で。音もないし、色もないし、匂いもなかったんです。そこで死ぬってこういうことなんだなって思った。死ぬってすごく静かだったんですよ。生きてるとうるさいじゃないですか。今も向こうで換気扇がガタガタ言っててうるさいし、毎日物価高で大変で悩みもいろんなことがあるけど、生きているってことは騒がしくて、死ぬと静かなんだなって思いました。そして夢だったから生きてた。

淡の間:夢でよかった。

武笠:そこで思ったのはね。何も起こらないよりは何かが体験できる痛みとか苦しみ、悲しみがある方が嬉しいって思ったかも。肉体を持って体験しに来てるって言うじゃないですか。私たちは。

淡の間:愛の反対って無関心とか言いますよね。愛の反対は嫌いじゃなくて、無。カオスの状態ってある意味、究極の「ここに有る」じゃないですか。だからそれって素晴らしいギフトというか、愛みたいなことですね。

武笠:そうだね。無風ではなく、暴風の中にいるっていうことが自分が生まれてきた意味そのものを味わっている。

淡の間:愛の体験なのかも、カオスっていうのは。

武笠:カオスっていうのは生きているがゆえの生っぽさ。肉体を持って体験できる愛。TTMは、その地上生活の体験に一緒に参加して、一緒に感じませんかっていうブランド。

淡の間:ああ、なんとかまとまってよかった!


【プロフィール】
淡の間(あわいのま)@aynoma.jp

西洋占星術や西洋神秘学、タロットカード、ヨーロッパ発祥の自然療法などを学び、オリジナルのカウンセリングや講座などを展開しながら地球を修行中。占いのほか、コンセプト監修や文章も執筆。「GINZA」のWEBサイト、 「フィガロジャポン」、「PERK magazine」などに連載を持つ。2026年春、仙台市に『禦翳(みかげ)』をオープン。


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