A to Z COLUMN   by aynoma 


D 「 Dharma 」



THINGS THAT MATTERのライティング・パートナーである淡の間(あわいのま)が、ブランドの世界観との親和性を構築するキーワードをAからZまで毎月ひとつずつ紐解くコラム。

今月のテーマは、D「Dharma」。



「私たちは、なぜこの世界に生まれてきたのか。」

「私とは一体何者か。」

「私の使命とは?」

誰もが一度は立ち止まり、そんな問いを胸に抱いたことがあるでしょう。例えば西洋占星術ではさまざまな方向から、その「なぜ」について考えることができますが、アーユルヴェーダやインド哲学、ヒンドゥーの思想ではその答えを「ダルマ(Dharma)」と呼ぶようです。ダルマとは、その人が生まれながらに持っている役割や道すじのようなものであり、「自分らしく生きること」「自分の使命を果たすこと」と言われていますが、今回は私なりにその意味を考えてみました。

それは仰々しく壮大な物語にとどまらず、もっと身近で静かな響きを持つもの。人を喜ばせたいという気持ち。

誠実に働いて、今日を食いつなぐこと。
誰かに手を差し伸べたい衝動や、ただ自分のからだを整えること。
心が動いたその瞬間。純粋な思いに触れ、涙が出そうになった時。
そのひとつひとつがすでにダルマの輪郭をなぞることではないでしょうか。
けれども、道はいつもやさしいわけではありません。
生きていれば、別れや裏切りや報われない思いもある。それが人生の経験です。

これもまたダルマの一部として考えて良いのでしょうか。綺麗事でしょうか。その瞬間にはなぜこんなに苦しまなければならないのかと、行き場のない気持ちの行き場に悩み、誰かや何かを問い詰めたくなることもあります。

しかし、その痛みのなかでしか見えない景色があります。

ほんとうに大事にしたいものは何か、他の何を手放してでも守りたいものは何か。この経験がもたらす時間は何を示すのか。

その問いかけは厳しいけれど、人生をまっすぐに耕していく力を持っています。これもまたダルマなのかもしれません。

喜びと苦しみは同じ源流から流れている水脈のようなものです。

どちらかだけを選ぶことはできず、両方を栄養に受けて歩き続けるのが私たちの生きる道です。光に照らされている時間があれば、影のなかでしか育たない感覚もある。その両方が、私たちをより深くしなやかにしていきます。

特別なことを成し遂げなくてもいい。たくさんじゃなくてもいい。耳を澄ませて心がかすかに「これだ」と動く、その一瞬を見逃すことのないように。

ときに迷い、ときに立ち止まりながらでも。その揺らぎごと引き受けて生きることもまたダルマに沿うということなのでしょうか。

生まれた瞬間から私たちは1日1日と死へ向かって進みます。

思い通りにならない現実のなかでも、朝が来て夜が更けていきます。

一刻一刻、死へと向かいながら、それでも誰かを想い、何かをつくり、ひとつの道を刻んでいく。それもまた命を使うということ。

できれば後悔のないように今日この1日を生き切りたいと思って今日も眠りにつきます。毎日その繰り返しです。

その繰り返しのなかでこそ、知らないうちにあなたはもう自分のダルマを、請け負った「使命」を生きているということではないかと思います。


ABOUT US

OUR STORY

生きることは息をすること。噛んだり浸したり目を細めたりしびれたりすること。ただそこに在るだけの自分の感覚を愛おしいと思えたら、還って、ただ還って、光みたいに透明になれる。

季節の色や手触りは、瞬きした途端しなやかにうつろう。その変化に頬を撫でられているようだと思う。気づいていないだけで、もしかしたらわたしたちも毎秒生まれ変わっているのかもしれない。

閃いたと思ったら甘い余韻を残して消えていく、それを追いかけていった先に何があるのだろう? そして、その“感覚のカケラ”に触れ、纏うあなたは何を感じるのだろう? 知りたいという願いは、涙が出る寸前の喉の痛みに似ている。

今この瞬間も、見つけてもらえることを願って切なく吐息を震わせているほんとうのあなたへ。この宇宙のどこかで、いつか出会える日を願って。


OUR BELIEF

“わたし” はなにを求めているのだろう──

混沌としたこの世界で大切にしなければならないのは、本当は、その問いであるはず。自分を静かに見つめてはじめて、感情は豊かに色づく。そして体の感覚がゆっくりと呼び覚まされ、空の色、空気のにおいのわずかな変化も心に響くようになる。わたしも、ともに社会に生きる人も、動物も草も海も森も、宇宙の一部。この星を巡るすべての ものと愛を通じて一体となることは、感謝に満ち溢れたとほうもなく美しい体験だ。

そこに在る何かを感じて自分の内側を見つめる、そのきっかけを多くの人に届けられたら。生きるということはあまりにも深く、あまりにも複雑な冒険だから、一緒に答えを見つけていきたい。一人ひとりの魂が満たされて、よどみなく流れる水のように循環していくとき、社会も自然も、きっとあるべき姿に戻っていくと、わたしたちはそう強く信じています。


MATTER

混沌としたこの世界で今、わたしたちが大切にしなければならないものとは何か。一人ひとりが、社会が、自然が、元のあるべき姿にゆっくりと戻っていくために。ディレクターが気になっていること、学びたいこと、深掘りしたいこと=MATTER。

お客様と共に学び・感じ・考えるきっかけとなるようなコンテンツ(記事・インタビュー)を、WEB限定のオリジナルコンテンツとしてお届けしています。